トリンテリックスの服用量増加によって、睡眠が浅くなり精神的病状が悪化した私は予約していたメンタルクリニックのアポイントを早め、医師に相談し、睡眠導入剤のゾルデヒム錠を処方して貰った。また頓服薬の効果が薄らいでいることを説明し、ロラゼパムの量を増やして貰った。休職して約1カ月半、病状は良くなる所か、薬を増やすことで現状を維持するような状態である。
薬剤師から睡眠導入剤のゾルデヒムは幻覚を見る可能性があると注意された。この薬の効果は抜群だった。3時間しか寝れない状況から、休職初期の疲労困憊で昏睡していた時期と同じような位よく眠れた。幻覚という表現が正しいか分からないが、意識がある内にイメージが具現化していき、そのまま夢の世界へ入る。これは私にとって面白い経験だった。ゾルデヒムを服用すること自体が1日のちょっとした楽しみになった。
とは言っても、鬱々とした気分は一向に改善されなかった。復職の日が近づくにつれて、また仕事のことを考えてしまい、ベッドから動けなくなる。ロラゼパムの量を増やして不安を濁した所でどす黒く鈍重な不安は私の底に常に存在していた。5月末頃人事から様子を確認すると言われていたので、それがある種のタイムリミットだった。
そして休職当初からタイムリミットを設定されたことによって、私の心は常に休まることはなかった。1日1日と迫って来る恐怖。しかし人事からメールが来る様子はない、私に興味がないのだ(分かっていたことだが)。私がタイムリミットの中で考えていたこと、常に葛藤していたことは退職するか、復職するか、これに尽きた。
私の心は休職した日に折れた。あの日、私は完全に死んだのだ。復職するのは迷惑を掛けた同僚に(恐らく嫌な気持ちを持ちながら)気を遣われ、違う部署に異動するにしても私が休職したことを知られた上で人事から紹介される、そんな映像が思い浮かぶ度に吐き気がした。
だから私は退職を考えていた。休職したまま退職するのが一番潔い。しかし退職して、転職出来たとしてまた同じような状況になるならまだしも、今より状況が悪化したら、再々転職は流石に難しい。それならば心理的に厳しくても部署を変えて復職を選ぶべきなのではないか?しかし・・・永遠の自問自答、地獄。
だがある日天啓が降りた。「退職しよう」、そう結論付けた私は自ら人事へ退職依頼のメールを打った。